ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『黒死荘の殺人』

「名探偵」は本の世界に数多存在するが、その個性ゆえに「会いたい人」と「関わりたくない人」に分かれる。

私の場合、ファイロ・ヴァンス氏(『ベンスン殺人事件』等)、C・オーギュスト・デュパン氏(『モルグ街の殺人』等)とは、あまり関わりたくない。
ちょっとでも何か言うと鼻で笑われそうで……。

話してみたいのは、エラリィ・クイーン氏(『エジプト十字架の謎』等)や、ドルリー・レーン氏(『レーン四部作』)である。
私がモタモタとしていても、こちらのレベルに合わせてくれそうな気がする。
国名シリーズの頃のエラリィ君なんて日本の文化について興味津々で聞いてくれるだろうし、レーン氏の朗々たるシェイクスピア劇の台詞は是非とも拝聴したいものだ。


さて、本作のヘンリー・メルヴェール卿(H・M卿)はというと……後者!
ちょっと覚悟(?)がいるけれど。
取り敢えず、日本酒でも持参しよう。

大きな口に禿げ頭。
象のような巨体。
足を机の上に投げ出して“腰を据えて考える”のがお得意のスタイル。
悪魔が逃げ出す程の悪態をつき、自惚れやで猥談の名手。

「とってもいやらしいお爺さまね」

この一言がぴったり。
部屋にジョゼフ・フーシェの肖像画を飾ったりして、なんかもうそれだけでキャラクターとしてインパクト大。
とにかく面白い爺さんなのだ。


さて、物語は語り手のケン・ブレークが友人からある頼まれ事をすることから始まる。
人によっては魅力的なお誘いかもしれない。

「幽霊屋敷でひと晩明かしてほしいんだ」

しかし、事案は幽霊の存在を確かめる事でなく、インチキ霊媒師の降霊会を見破って欲しいという事。
問題の場所は、かつてペスト(黒死病)患者を隔離していた石室だ。
離れに建つ完全な密室である。

屋敷に呪いをかけて死んだ男。
名はルイス・プレージ。
その凶悪な男が生前チラつかせていた短剣はロンドン博物館から音もなく盗まれ、屋敷との因縁が明らかになる。
そして起った「完全なる密室」での殺人。
しかも、被害者は盗まれた「ルイス・プレージの短剣」で血まみれになって殺されていた。


さあ、H・M卿が示して見せた答えは……!
「やられたー!」が犯人について。フーダニットの部分。
「えぇぇー?」っていうのがトリックについて。ハウダニットの部分。
ああ、これなのね。
これが元祖だったのね、って。
でも、ちょっとズルイ気がした。
分かんないよ!
もうちょっと情報公開プリーズ!!ぐぎぎぎぎ。くやしい。


しかし、まあ面白いんだなあ。
ゴシック感満載の舞台装置。
降霊会に霊媒師。
呪いを込めて死んだ男。
男の素性と屋敷の秘密が詳らかになる様子なんて、いかにも冷たい空気流れてますよ~って感じ。
雨、闇、ぬかるみ。
もーう、雰囲気バッチリ。

そして、チャーミングなH・M卿のキャラクター!
次にこの爺さんがどんな悪態をつくのか。
実はそっちの方が楽しみになってしまった。





関連記事

| J.D.カー/カーター・ディクスン | 19:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://cittagazze.blog.fc2.com/tb.php/486-f335529f

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT