ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『巨人たちの星』

最後に崇めた 一つの真理が 牙をむく時をうかがう

                 「GREAT DEVOTION」 聖飢魔II



2080年代、地球はようやく内戦を止め、平和と共存に向かって歩き出した。
そこに、異星人ガニメアンとの穏やかな出会いが影響している事は間違いない。
地球という惑星が、そこに住む一人一人が「ひとつになれる」という大きな自信になった事だろうと思う。

そんな地球を見ている「観察者」が居た。
かつてミネルヴァで相対していた戦争は、まだ続いていたのだ。
長期的に。
一方的に。


今回はサスペンス色が濃く、楽しいドキドキよりも、緊張感の方が強い。

ガルース率いるシャピアロン号の一行は、かつてのガニメアンが暮す星「ジャイスター」に辿り着いた。
しかし、待っていたのはガニメアンから更に進化したテューリアン。
ガルース一行は、時間に取り残された「旧ガニメアン」として、また違った孤独を味わうことになる。

カラザーをリーダーとするテューリアンは、恒星間を自在に移動する技術をもつ。
「太陽を動かす」という地球人には冗談としか思えない実験を行っていたガニメアンでさえ、驚嘆するようなテクノロジーを獲得していたのだ。
あらゆる「場」は最大限に生かされ、後に訪れたハントをはじめとする地球人一行は「まるでエッシャーの世界に迷い込んだよう」な感覚を味わう。

しかし、テューリアンの地球人に対する見解は非常に厳しいものだった。
いかに地球人が攻撃的であるか。
いかにシャピアロン号を責めさいなんだか。

悪夢のようなテストの後、誤解を解けたはよいものの、何故その「恐ろしい誤解」が生まれたか。
「悪意」の出所はどこなのか。
「観察者」は、そして「攻撃」はどこから行われているのか。

温厚な性質をもつテューリアンや、まして地球人と強い絆で結ばれたガニメアンではありえない。

ここからが本作の見せ場だ。
痛快といっていい程の鮮やかな「戦争のお手並み」を地球人は披露することになる。
あくまで「平和的に」だ。

そして、シリーズ最終作である 『内なる宇宙』 への布石ともいえるセリフが引き出される。


「しかし、ジェヴェックスは……」
「ジェヴェックスは頼りにならん。われわれはいったい何を信じたらよいのだ?」



攻撃者が「崇めて」いたもの。
与えられるだけで、己で掴まなかった「真理」。
それが、「牙をむいた」時のセリフが上記に凝縮されているように思う。


『星を継ぐもの』 での謎をまた一つ解明しつつ、作者の追撃は続く。
読者の心を揺さぶり、平和への恒久的な模索を続ける意味を強く訴える本作。

そして、人類の旅は人間賛歌を歌いつつ更なる深淵へ……、最終作へと続く。






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| ジェイムズ・P・ホーガン | 18:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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