ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『サラサーテの盤』

内田百閒による珠玉の短編集。

「東京日記」
「桃葉」
「段章」
「南山寿」
「菊の雨」
「柳検校の小閑」
「葉蘭」
「雲の脚」
「枇杷の葉」
「サラサーテの盤」
「とおぼえ」
「ゆうべの雲」
「由比駅」
「すきま風」
「東海道刈谷駅」
「神楽坂の虎」



なかでも「東京日記」「柳検校の小閑」が好きで好きでたまらない。


「東京日記」は都市の日常に忍び込むパラレルワールド的な世界を描いた連作。
私が特にお気に入りなのは「その四」だ。
東京駅を電車で通る度、一匹のあめんぼうを思い出す。


「柳検校の小閑」は素晴らしく大好きな一遍。
老いた検校の若い女性への恋慕の情が上品に描かれる。
老いらくの恋というには、はかなくて、ひかえめで。
それにしても盲人の感覚がどうしてこうも自然に描けるのかと驚くばかりだ。
柳検校の周囲をとりまく人間模様、盲人同士の集会と晴眼者への微妙な感情。
人力車のガタゴトという音と身体を伝う振動。
風で感じる天気。
晴眼だった若い頃に見た稲妻の色を思い出す心持ち。

「撫でて見る」という盲人ならではの感覚が、それこそ物語を手でなぞるような感覚を教えてくれるのだ。


「すきま風」の冒頭は、この短編に多くみられる怪談話を面白く表していて楽しい。
お気に入りの部分を引用しておこう。

早く戸締りをして寝なくてはいけない。或いは寝てはいけないかも知れない。泥坊は大概夜中に来る。泥坊が来る時分に寝ているから泥坊が来る。来るのが泥坊ならいいが、泥坊でないものが来たらどうする。泥坊でなくて来るのは何だと、そこ迄考えかけたら、いや考えはしないけれど、そっちの方へ気が散ったら、途端に髪の毛が一本立ちになった。


作品解説が三島由紀夫 であることも書いておかねばなるまい。


さて、不可思議な幻想の世界。
今宵一献、如何ですか?





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