ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『夏への扉』

久しぶりに再読して「やっぱりいいなぁ」と思った。
ハインラインの描く「未来に対する絶対の希望」は心を元気にしてくれる。


主人公のダニイは発明家肌のエンジニアだ。
相棒はジンジャーエールが好物の猫、護民官ペトロニウスこと愛称ピート。
彼らは絶大な信頼関係で結ばれている。

ピートはダニイの家の人間用のドアをしつこく開けるよう、何度も訴える。
そのドアの先に、雪の降る「冬」でなく光の射す「夏」を探しているのだ。

平穏と思えた日々に、突然ダニイの「冬」が訪れる。
共同経営者と婚約者の裏切り。
そして、なんと冷凍睡眠で30年後の未来へと送り込まれてしまう。

科学の世界は日進月歩だ。
目覚めた先ではエンジニアとしての腕は使い物にならない。
しかし、ダニイは“過去の自分が作った物”「文化女中器(ハイヤード・ガール)」に助けられる。
発明者として会社に籍を置けたのだ。

やがて、ダニイは不思議な物に出会う。
“かつて自分の頭の中にだけあった物”が存在したのだ。
そこには、ダニイと同じイニシャルが設計者として記されていた。

なぜ“在る”のか?
“作った覚えがない”のに?
全く同じ考えを持つ人物が、全く同じイニシャルで存在しているのだろうか?
そんな事があり得るのだろうか?

そして、“未来”に馴染む程強くなる孤独感……。
“過去”に対する渇望。

やがて、ダニイは唯一のチャンスを見い出す。
リスクを覚悟の上で、自らの「夏への扉」を探すことを決意する。

そこからはもう、読んでいる方も気忙しくなるような八面六臂の大活躍!
かつてのピートが信じていたように、ダニイは「夏」を求め、あらゆる扉を開けていく。


とにかくテンポが良いので、主人公が大変な目に遭っても悲観せずにポンポン読める。
文章のリズムが気持ち良い。
福島正実訳の温かさもあるかもしれない。
小尾芙佐訳でSFの世界に入った私としては、そちらも大いに気になるのだが読むかどうかはまだ迷っている。


同作者の 『月は無慈悲な夜の女王』 とどちらが好きか、などとよく比べられる本書。
だが、私は同じSFでもジャンルが違うように思う。
読後感は『夏への扉』が、読書中は『月は無慈悲な夜の女王』が私を夢中にさせる。

ただ、共通する事はひとつ。
未来は自分で作るしかない。
今がたとえ冬だとしても、夏へ通じる扉はある。
絶対にあるのだ、と。
だから

彼は、そのいくつもあるドアのどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。

私もピートやダニイと同意見。
だってそうじゃなきゃ、やってらんないっしょ!






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