ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

2015年04月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年06月

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『オルゴールワールド』

どれ、奇跡の話をしようじゃないか。

こんな一文から始まる、世界を繋ぐオルゴールの話。
奇跡をおこすには、地道な努力が必要だ。


「ちょっくら奇跡に用がある」

そう言って、老人は世界を繋ぐ為に巨大なラッパを作っている。
奇跡をおこすには、長い時間と「約束」が必要だ。

一人じゃ奇跡はおこらない。
相手がいるから。
伝えたい相手がいるから、そして受け取ってくれる相手がいるからおこるのだ。


この絵本に飛びついたのは、「原案・タモリ」の背表紙からだった。
そして、著者はお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さん。

笑いを生む、ということは一番平和で一番危険なことでもあると思う。
例えば風刺画。
社会問題に対してギリギリに斬りこむ芸人さんもいる。
巨大なラッパを作っている老人は、長い長い綱渡りをしているように描かれている。
落ちれば言わずもがな、だ。

そういう人達にとって、音楽は「ズルイ」のかもしれない。
言葉も時代も宗教も関係なく、一度に全部繋がってしまうから。

「原案」がどこまでなのか分からないが、世界を優しく包み込むようなストーリーが素晴らしい!
ラストでは私にもオルゴールの音色が聞こえてくるようだった。

奇跡は一朝一夕にはおこらないし、おこせない。
奇跡を起こすには、長い時間と地道な努力が必要だ。

そんなことをする人は 阿呆 と呼ばれても気にしない。
「約束」が阿呆に力をくれるからだ。
自分との約束であり、遠くの誰かとの約束が。




| 絵本 | 03:03 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『変身/掟の前で 他2編』

書いてある事柄ははっきりしているが、受け取り方は読者それぞれに委ねられるカフカ。
たぶん、読んだ時期でも違うだろう。
10年後の私は全く違う事を思うかもしれない。
とりあえず、私の2015年版だ。


「判決」
一人の人物の「極端な表と裏」なのかと受け取れた。
主人公は「表」だけが「自分」なのだと思っている。
しかし、どこかでそれに違和感を感じてもいる。
だから「裏」である父親に相談したのだ。
それを受け取って、自ら下した「判決」なのではないだろうか。
あくまでも、自ら。


「変身」
朝、起きたら虫になっていた主人公。
それでも家族は必死になって守ってくれる。
「虫」=「病」と思うと納得がいく。
家族も主人公も優しくて、悲しくて、涙がでる。


「アカデミーで報告する」
猿がアカデミーで演説をする。
メタファーとしては「猿」=「連れ去られてきた先住民(黒人・有色人種)」だろう。
滑稽と思いつつ、猿は人間(白人)の真似をするしか生きる術がなかったのではないだろうか。
以下の引用からも読み取れる。

人間の真似に魅力を感じたわけではありません。真似したのは出口を求めたからです。


「掟の前で」
何度でも出直せばいいのに。
そう思わずにはいられなかった。
門が開くかは分からない。
だが、無為に時間を過ごすよりはずっといい。
「掟」が何かは今の私には分からないが、ただ待つのではなく、何度でも門を訪ねるだろう。


今は、こんな風に感じた。
次に本を開く時が、「私の掟の門」を訪ねる時だ。





| 海外 | 19:49 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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