ちった図書室 ~Bibliothèque de Cittagazze~

手当たり次第に読んだ本を手当たり次第に記していこうという、意気込みだけは凄い図書室。目指すは本のソムリエです。

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『バビロンの架空園』

植物に纏わるエッセイを集めたアンソロジー。

まずは 「フローラ逍遥」 と題された25の花に寄せる心の散歩だ。
水仙、椿、梅、菫、チューリップ、金雀枝、桜、ライラック、アイリス、牡丹、朝顔、苧環、向日葵、葡萄、薔薇、時計草、紫陽花、百合、合歓、罌粟、クロッカス、コスモス、林檎、菊、蘭……。

プリニウスの『博物誌』 からの引用も多く面白い。
なかなか読むことはないであろう本だから、お得感もあったりして。

琥珀については「ポプラや鳥の涙がメタモルフォーシスしたもの」という記述。
なんて素敵な想像力だろう。
鉱石みたいで、植物で、化石。
虫入り琥珀はタイムカプセルみたいだし、古代ギリシャでは「太陽の石」だった。
たしかに、「琥珀色のワイン」なんて書いてあると、うっとりしてしまう。
私にとっては、トカイワインがそれだ。

書名にもなっている 「バビロンの架空園」 は古代バビロニアの屋上庭園だ。
絶世の美女、セミラミス女王の伝説と相まって、甘い香りが漂ってきそうな気がする。
乾燥した大地にそびえる巨大庭園は噴水が水をたたえ、鳥が舞い、色とりどりの花が咲く……。

そんな想像を巡らせていると、お次は 『とりかへばや物語』マルキ・ド・サド の世界に突入する。
しっかり澁澤ワールドに浸かって読了できた。



| 澁澤龍彦 | 10:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『妖人奇人館』

身構えて読んだら、肩透かしをくらってしまった。
あまりの内容に、湯あたりならぬ「本あたり」を起こした 『異端の肖像』 とは全く違う。
とにかく軽い。しかし、面白い。
ビールを片手に気軽に読みたい感じだ。

取り上げられているのはヨーロッパの奇人達。
恐ろしい「切り裂きジャック」から、人畜無害な「サン・ジェルマン伯爵」まで様々だ。

特にフランスはブルボン王家の頃には「変な人」の巣窟だったようだ。
錬金術師のカリオストロに、不老不死のサン・ジェルマン伯などなど……。

マリー・アントワネットと愉快なロココの仲間達!
うーん。もし実在したのなら、ギロチン大活躍の時代に命がけのバカである。

でも、親に愛されなかったが為に殺人を繰り返したという、ピエール・フランソワ・ラソネールについて書かれた「殺し屋ダンディ」。
これだけは、永遠のテーマなのかもしれない。

どうして人は、愛したり愛さなかったりするんだろう。
バカもホラ吹きも伯爵も殺し屋も、皆紙一重な気がする。




| 澁澤龍彦 | 15:50 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『異端の肖像』

時代、時代を強烈に生きた「異端児達」を澁澤テイスト満載で読み解くエッセイ。

戯曲化もされ今も狂王の名高い、ルードヴィヒ2世

ナチスに影響を与えたロシアの魔術師、ゲオルギー・イヴァーノヴィッチ・グルジエフ

両性具有者(アンドロギュヌス)を追い求めた、ロベール・ド・モンテスキウ・フンザック伯爵

「ある者は不幸を忘れるために酒を飲む。わたしは飲まない。建てるのだ」と日記に書き、全長70メートルのオクタゴン(八角形の角塔)という昼間でも夜のように暗い建築物を建てた、ウィリアム・ベックフォード

ジャンヌ・ダルクと共に多くの戦場を闘いながら血にまみれ、殺すことで自分を保つ為に100人以上の幼児虐殺を行った、ジル・ド・レエ

僧侶に陵辱される美女や獣姦を書いた『オルガン』を発表し、ルイ16世をギロチンに送り、また自らもその露と消えた“恐怖時代の大天使”、ルイ・アントワヌ・レオン・ド・サン・ジュスト

太陽神バールの大司祭にして14歳で帝王の座に就き、血の儀式を行いながら真の両性具有者となった(下腹部を切開し、女陰を穿たせた)、ヘリオガバルス

……いやー、も~~あまりの濃度に湯あたりじゃなくて「本あたり」。
2回読んでやっと少し分かった気がした。
いや、気がしただけかもしれない。




| 澁澤龍彦 | 07:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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